【セルフ】ハーフソールを自分で張る方法と手順【DIY】
革靴につきもののハーフソールを張るか張らないか問題。
ハーフソールはハーフラバーとも呼ばれ、革靴のレザーソールの上からラバー製のソールを張り付ける手法なワケですが、日常的に革靴を愛用している人であればハーフラバーを張るべきか否かで悩んだことがある人も多いはず。
ハーフソールすると決めたら靴修理のお店で張ってもらうのがごく一般的ですが、今回はハーフラバーを自分で張る方法と手順について書いてみたいと思います。
が、最初に書いておくと、手間と時間を考えれば圧倒的にお店で頼んだ方が簡単だし綺麗だしコスパも良いと思います。
一般的なお店であれば、料金が2,000~3,000円くらい、所要時間20~30分くらいで仕上げてもらえるはず。
靴修理大手チェーンのミスターミニットなら、オンラインでも受け付けています。
セルフに関しては、あくまでもDIY的な、実験的な、趣味的な範囲でお考え下さい。
ハーフソールのメリット・デメリット
まず初めに、ハーフソールのメリット・デメリットについて簡単にまとめておきます。
ハーフソールのメリット
ハーフソールを張ることで得られるメリットとしては、
- グリップ力が向上(滑らなくなる)
- オールソール(レザーソール全とっかえ)のタイミングを遅らせる
- 水が染みるのを防止(主にマッケイ)
概ね以上の通り。
まず、レザーソールだと滑りやすいということが第一にあって、ラバー製のソールを張ることで滑りにくさが大きく向上します。
ただ個人的にはレザーソール特有の履き心地も嫌いじゃないので、あくまでもお好みで。
2の「オールソールのタイミングを遅らせる」ということについては、レザーソールと比べて耐久力のあるラバーソールに変更することで靴の寿命が延びます。
底が削れてもオールソールすれば蘇るのが革靴の魅力でもあるのですが、オールソール自体も(製法による増減はあれど)回数に制限があって永久に繰り返せるわけではないので、より長い年月履き続けたい革靴ということであれば、ハーフソールで寿命を延ばすというのは大いにありな選択。
3の「水が染みるのを防ぐ」というのは、主にマッケイ製法の革靴に言えること。
マッケイ製法はアウトソールからアッパーまで一度に縫い上げるため、靴内部にステッチが貫通している構造になっていて、底面のステッチから水を吸って染みやすくなっています。
その縫い目を上からラバーソールで塞いでしまうことで、水が染みるのを軽減することが出来るというわけ。
完璧に防げるワケではないし、そもそも革靴自体が雨の日に履くこと自体避けた方が無難ですが。
ハーフソールのデメリット
一方、ハーフソールのデメリットとしてよく挙げられるのは、
- ソールの曲がり(返り)が悪くなる
- 通気性が損なわれる
以上の2点。
ただ筆者としてはどちらもあまり感じたことは無いし、それほど気にする必要はないと思っています。
1については、一般的な革靴に使われる厚さ2~3㎜のハーフラバー程度では、履き心地が損なわれるほど曲がりにくさを感じることはまずありません。(ワークブーツに使われるような分厚いラバーソールなら別かもですが)
また、2の通気性については、そもそも底面にラバーソールを張ることで急に蒸れるような構造にはなっていない(はず)。
ライナーやインソールなどの靴内部がレザー製か合皮か、といった部分の方がよほど影響すると思われます。
よって、ここで挙げたような一般的に言われるデメリットに関しては、それほど神経質になる必要は無し。
ハーフソールを張るタイミング
ハーフソールを張るタイミングとしては、
- 履き始め(新品)
- 少し履いて足に馴染んだころ
- オールソールと同時に
大体の場合、以上の3つのタイミングかと。
個人的には1か3で行うのが良いかなと思っています。
特に、ハーフソールすることで履いた感触も若干変わるため、足への違和感を出来るだけ軽減するタイミングとしては1が3が適切かと。(2がダメというワケでもなく、後述する底面を荒らす作業も省けるというメリットも)
SHIPS ホースレザーチャッカブーツ
今回サンプルになってもらうのは、年末(だったか?)に買っておいたSHIPSのチャッカブーツ。
マッケイ製法で作られたアンクル丈の国産革靴。
SHIPSが毎年出している人気モデルです。
日本靴工業会・全日本革靴工業協同組合連合会の名前が入った注意書きが同梱されています。
リーガルや大塚製靴、マドラスなどが所属する上記団体の会員企業のどこかでOEMの委託製造を行っているということでしょう。
SHIPSへの持ち込みでオールソールも可能(もちろん有料)で、価格も2万円台とお手頃。
セールで1万円台。
安価なのでセルフハーフソールのサンプル(いい意味で)になってもらおうと買っておいたものになります。
反りのいいマッケイ製法ならではの魅力。
アッパーには光沢感のあるホースレザーを使用し、柔らかで軽やかな履き心地です。
特徴的なのはアッパーに施されたシワ加工&ワックス加工。
新品でありながらヴィンテージライクな雰囲気を醸し出しています。
ダークブラウンの色味とも相性抜群。
パドローネあたりがシワ加工得意なイメージ。
底面に見えるマッケイ糸。
で、こちらのチャッカブーツは前述のとおりマッケイ製法を用いられているため、ハーフソールの恩恵(水染み防止)を多少なりとも受けられるということで、セルフで張ってみようというわけ。
ハーフソール セルフの工程
さて、ここからは自分でハーフソールを行う工程について。
冒頭にも書きましたが、自分でハーフソールをする際には綺麗さを求めるよりも「個人が出来る最低限の作業で、違和感なく剝がれないように貼れるか」を重視するべし。
材料と準備
今回使用するラバーソールは、安定品質のVibram(ビブラム)ソール。
ハーフラバーの定番である#7673という品番。
単品で売っている場合もありますが、今はラバーソールの他に専用ボンド、布やすり、ブラシが付いたセルフ用キットも売っているので便利。
ソールサイズがNo.1からNo.5まであって、数字が大きいほどサイズも大きくなります。
No.3くらいであれば、かなり大きさに余裕があるとは思いますが、足のサイズが大きく不安がある方はNo.5を買っておけば間違いないと思います。
ソールキット以外では、
- ゴム製ハンマー(ソール圧着用)
- 紙やすり(粗目~細目入り)
- ボンドを伸ばすヘラ(筆者は今回割り箸を使用)
- マスキングテープ(あれば便利)
- ドライヤー(恐らく大抵の家庭にあるはず)
上記を100均などで用意しておきましょう。
工程1. ソールの貼り付け位置を決める
まずは貼り付け位置を決めます。
大体のアタリをつけて鉛筆ででも印をつけておく。
ポイントとしてはソールと地面の接地面よりも1~2cm下に張ること。
ラバーソールとの境目がちょうど接地する場所に来てしまうと、引っ掛かりや剥がれる原因になってしまいます。
数回履いたものならソールの削れがあるので分かりやすいですが、今回のように新品にハーフソールを張る場合は、定規などの直線的ななにかを水平に当ててみて接地面を見極めるのがよい。
触れている場所が接地面になるので、そこから1~2㎝下から張り付ける、という目安。
貼り付け位置が決まったら、印代わりにマスキングテープを使うと、余計なところに接着剤が付くのを防ぐことが出来ます。(使わなくても問題はなし)
工程2. ソールを荒らす
次はソールをヤスリがけ。
ツルツルの新品ソールなのでヤスリをあてて荒らしていき、ラバーソールとの接着力を高めます。
ここで使用するのはソールキットについていた布やすり。
削れたレザーソールの粉末が出るので作業場所に注意。
筆者は以前リジットデニムの洗い方の回でも登場した折りたためるタライを持ち出してその上でガリガリと削りました。
この子は本当に使える。
で、一通り荒らし終わったら、ソールに残っている粉末をしっかりと落としておきます。
特にステッチ周りは粉が溜まって残りやすいのでブラシを使って入念に落とします。
粉末が残っていると接着の邪魔になるので。
ヤスリがけ終わりの状態。
一応ステッチに直接ヤスリが当たらないように削ってはいますが、多少糸を削っても特に問題はありません。
本来であればハーフラバーとの境目にあたる下方部分をハーフラバーの厚み2~3mmに合わせて削って、境目の段差をなくした方がより見栄えも良くなりますが、個人でそこまでするのは避けても良いかなということで省略。(溝の高さを揃えないとかえってガタついて見えるし、万が一ソールにカッターの刃を立てて貫通させたら元も子もない)
工程3. 接着剤を塗り込む
いよいよここで専用ボンドの登場。
ハーフラバー側、レザーソール側に万遍なく素早く塗り込んでいきます。
専用ボンドの粘度が高く、もたもたしているとすぐ乾いてきて伸ばすのに力がいるので、出来る限り早めに塗り込んでいくのがポイント。
今回ヘラの代わりに割り箸を使っているのは、使い終わったらそのままポイッと出来るのが良い。
ここまでで全体に塗り終わっても、すぐに張り合わせることはしません。
接着剤が乾ききる前に剥がれてしまうので。
- そのまま30分ぐらい放置
- 張り合わせ直前にドライヤーで温める
以上の工程を踏むことで、接着剤の効果を最大限発揮。
工程4. ラバーソールを張り合わせる
セルフハーフラバーもいよいよクライマックス。
温めたソールを実際に張り合わせていきます。
工程1で付けた印に合わせて、下部の方から張り合わせていきます。
ズレないようにしっかりと合わせてギュッギュッと。
ここでハンマーが登場。
まずは全体をハンマーの頭で空気を抜くようになじませ、その後ガツガツと叩いて圧着させていきます。
縁の部分は特に圧着が甘くなりがちなので、ソールの形に合わせて全体をしっかりと圧着させる意識。
工程5. 余った部分をカットする
ラバーソールの接着が完了したら、コバからはみ出している余分な部分をカッターでカット。
コバに沿うようにカットしていき、最後にカットした断面をヤスリで整えて完成。
ヤスリがけは粗目から細目の順番にかけていき、粒度80→100→200位を目安に3~4段階ほどに分けて仕上げ。
完成!
まとめ
セルフでのハーフソールを紹介しといてなんですが、何度も言うようにハーフソールをするならお店に持ち込みの方が確実です。
道具も経験も限られる個人の場合は、手間がかかる上に仕上がりも最低限。
店舗だと所要時間20~30分くらいで仕上げてくれたりしますし。
それでいて料金も大体2,000~3,000円なので、材料費と手間を考えたらお店に持ち込んだ方がコスパは圧倒的に良いです。(よほどおかしなところに頼まなければ)
それを踏まえたうえで、あえて自分でハーフソールするメリットとしては、作業工程をDIY的に楽しめるかどうかかなと思います。
どうせ失敗してもせいぜいラバーソールが剥がれる程度、なんならオールソールのタイミングで本来の姿もまた蘇りますし。
興味がある人は一度チャレンジしてみても良いかと思います。
ではでは。