ミリタリー由来の機能性コットン生地「ベンタイル」
ミリタリーアイテムの特徴のひとつである「機能性」。
過酷な環境化で使用されることを想定した造りとして、日常使いには少々オーバースペックかと思わされることもありますが、それでもなお惹き付けられる魅力があることは事実。
ミルスペック(=MIL規格/米軍の物資調達規格ので総称)なんて言葉の響きに弱い人も多いはず。
で、今回紹介するベンタイル生地もミリタリーを由来とした機能性素材のひとつ。
コットン100%の生地で、ウールなどに比べると軽やかでバサッと羽織れるのに、しっかりと寒さ対策にも使える優れもの。
最近でいうと、冬から春にかけて起こる『寒の戻り』などの風が冷たいときや、花を散らす『春の雨』など、冬物を使うにはちょっと重すぎるような季節の変わり目の寒暖差にも使えるので大変重宝します。
特に筆者は寒がりであり暑がりでもあるので、気軽に脱ぎ着出来る軽やかさが好き。
今回はベンタイル生地について、以前スプリングコートを紹介したブランドMANUAL ALPHABET(マニュアルアルファベット)のベンタイルステンカラーコートとともに紹介します。
ベンタイル生地とは?
ベンタイル生地とは、1930年代後期~1940年代初頭に起こった第二次世界大戦時に英国空軍のパイロットスーツとして開発された素材。
当時、海上の空中戦で被弾したパイロットが海に着水した際、従来の軍服ではすぐに浸水してしまい、海水の冷たさによって凍えて亡くなってしまうことが多かったのだとか。
こうした問題を解決するために、耐水製のある生地として開発されたのがベンタイル生地です。
ベンタイル生地の特徴
ベンタイル生地は、コットン100%でありながら耐水・撥水性に優れた素材。
もともとはタルボットウィービング社という英国のファブリックメーカーが開発しました。
当時は世界三大綿のひとつである超長綿『ギザコットン』を使用し、希少な長繊維素材を大量に使って超高密度に織り上げることで、生地が濡れた際に糸が膨張して隙間を収縮させ、水が浸透しつづけるのを防ぐという原理になっています。
また、逆に乾燥している際には通気性・透湿性に優れるという、コットンの特性を最大限に生かした機能性素材となっているのです。
ベンタイル生地のメリット
今回サンプルになってもらうのは、マニュアルアルファベットのベンタイル生地ステンカラーコート。
先日、春コートにピッタリなタイプライター地のシャツコートを紹介したブランドです。
ベンタイル生地を使用するメリットとしては、前述のような防水性・透湿性を併せ持ちながら、着心地は軽く、耐久性にも優れていることが挙げられます。
同ような防水性のある生地にはナイロンなどのテック素材もありますし、合繊素材の方がより強力な防水性を持っていたりもしますが、ベンタイル生地には合成繊維のようなシャカ付きも無く、丈夫な生地なのにあくまでもナチュラルな風合いを楽しめるのが魅力。(ナイロンもグレードによるけれど、一般的なアイテムと比較して)
合繊と比べると透湿性は遥かに高いので、雨などはしっかり防ぎながら蒸れることが無いのも大きなメリット。
打ち込みの多い高密度生地ということで、防水のみならず防風性能も高いです。
風が冷たい季節の羽織にも使えますね。
自然な光沢感が生まれることで高級感も感じられ、また、耐久性もあるので経年変化によって味わいも深まっていきます。
コットン100%ならではの良さを最大限に生かした生地のひとつであると言えるでしょう。
水を弾く様子
実際に水を弾く様子を見てみましょう。
生地の上に水を垂らすと、水の粒が弾かれているのが見てとれます。
ちなみに、マニュアルアルファベットで使用されているベンタイル生地はコートらしさのある綾織り生地ですが、平織りで薄手のベンタイル生地もあるようです。
生地を傾けると、真ん丸の球状を保ったままコロコロ転がります。
コロコロしてると妙にクセになる。
手で払うなり軽く拭くなりすると、水は跡形もなく消えます。
生地に染みこんだ様子が無いのもお分かりになるかと。
まとめ
今回はコットン100%の防水素材ベンタイル生地について紹介しました。
防水・撥水という機能性はもとより、生地の風合いや高級感も楽しめる贅沢な素材。
価格も高くなりがちですが、ブランドによっては比較的手を出しやすい価格で販売していたりもするので、いろいろと探してみるのもイイでしょう。
「ミリタリー由来」というだけでなんとなく憚られるような最近の情勢。
軍の払い下げ品など、平和があってこそなのだとつくづく思い知らされております。
ではでは。